Complete text -- "Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 161"

26 April

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 161


 Sufficient of this Hook guessed to persuade him that Peter at last lay at his mercy, but no word of the dark design that now formed in the subterranean caverns of his mind crossed his lips; he merely signed that the captives were to be conveyed to the ship, and that he would be alone.
 How to convey them? Hunched up in their ropes they might indeed be rolled down hill like barrels, but most of the way lay through a morass. Again Hook's genius surmounted difficulties. He indicated that the little house must be used as a conveyance. The children were flung into it, four stout pirates raised it on their shoulders, the others fell in behind, and singing the hateful pirate chorus the strange procession set off through the wood. I don't know whether any of the children were crying; if so, the singing drowned the sound; but as the little house disappeared in the forest, a brave though tiny jet of smoke issued from its chimney as if defying Hook.
 Hook saw it, and it did Peter a bad service. It dried up any trickle of pity for him that may have remained in the pirate's infuriated breast.

 フックはこの事実を充分に理解し、ようやくピーターの命運を我が手に握ったことを確信したのである。しかし彼の心中に浮かんだ見えざる奸計は、その口に発せられることは無かった。フックはただ身振りを用いて、虜囚を船に運び込むように手下共に指図し、そして自分は一人この場所に残ることを告げたのである。
 捕虜達をいかにして運ぶのが良いであろうか?ロープに丸く絡め込まれていた子供達は、樽のように斜面を転がしていくこともできた。しかしその先は湿地帯が続いていた。再びフックの優れた頭脳が、困難を解決した。彼は子供達が作った小さな家を、運搬手段に利用するように命じたのである。子供達はこの家の中に放り込まれた。四人のがっしりとした海賊が、これを肩にかついだ。他のもの達はその後に続いた。こうしておぞましい海賊の唄を歌い上げながら、この奇妙な一隊は森の中を抜けて行ったのである。子供達の誰かが泣き叫んでいたかどうかは分からない。そうであったとしても、海賊達の歌声で耳には聞こえなかった。しかしこの小さな家が木々の間に姿を消した時、煙突から小さくはあるがしかし元気一杯の煙が、あたかもフックに挑戦するかのように立ち昇った。
 フックはこの煙を目に止めた。そしてこれが、ピーターには不利に運ぶことになった。この煙は、凶暴な海賊の心中に僅かに残っていたかもしれない憐憫の念を、完全に断ち切ったのである。

 捕虜になった子供達を運搬する方法を案出するにあたって、再びフックの優れた知力に対する賞賛が語られている。おそらくこの評価を与えた根拠には、実利的な工夫に対してよりもむしろ、行動を意味ありげに演出する遊戯的な儀式を創出する能力に対する作者の深い共感があったことと思われる。

用語メモ
 儀式(ritual):実利上の要請が全く無いにも関わらず、敢えて様々の手間を設けて、場合によっては目的完遂の障害ともなりかねない諸事が、儀式と言われるものである。徹底的な遊戯と純粋な創造という観点からみれば、これに勝る興味深い行為の案出はあるまい。



◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇平成17年12月21日和洋女子大学にて開催の
“ポエトリー・リーディング”
において行った朗読、「“Frivolous Cake”ー“浮気なケーキ”を読む」をアップロードしました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/speech/cake/cake.html

◇“公開講座8” The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/H17E_fest/eibun.htm

◇“公開講座9”:自分との共生
ジャンヌ・ダルクの影とナウシカの影 ―神や悪魔として現れるものたち
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/joan/joan.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:アンチ・ファンタシーの中のヒーロー(英雄)―『最後のユニコーン』のアンチ・ロマンス的諧謔性とファンタシー的憧憬”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/antiromance.htm




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