Complete text -- "Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 192"

27 May

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 192


 "No, lads, no, it's the girl. Never was luck on a pirate ship wi' a woman on board. We'll right the ship when she's gone."
 Some of them remembered that this had been a saying of Flint's. "It's worth trying," they said doubtfully.
 "Fling the girl overboard," cried Hook; and they made a rush at the figure in the cloak.
 "There's none can save you now, missy," Mullins hissed jeeringly.
 "There's one," replied the figure.
 "Who's that?"
 "Peter Pan the avenger!" came the terrible answer; and as he spoke Peter flung off his cloak. Then they all knew who 'twas that had been undoing them in the cabin, and twice Hook essayed to speak and twice he failed. In that frightful moment I think his fierce heart broke.
 At last he cried, "Cleave him to the brisket!" but without conviction.
 "Down, boys, and at them!" Peter's voice rang out; and in another moment the clash of arms was resounding through the ship. Had the pirates kept together it is certain that they would have won; but the onset came when they were still unstrung, and they ran hither and thither, striking wildly, each thinking himself the last survivor of the crew. Man to man they were the stronger; but they fought on the defensive only, which enabled the boys to hunt in pairs and choose their quarry. Some of the miscreants leapt into the sea; others hid in dark recesses, where they were found by Slightly, who did not fight, but ran about with a lantern which he flashed in their faces, so that they were half blinded and fell as an easy prey to the reeking swords of the other boys. There was little sound to be heard but the clang of weapons, an occasional screech or splash, and Slightly monotonously counting -- five -- six -- seven -- eight -- nine --ten -- eleven.

 「そうじゃない。問題は、女の子だ。海賊船に女が乗り込んで、碌な試しが無かった。女の子がいなくなれば、この船も問題は無しだ。」
 手下共の幾人かは、これはフリント船長がよく言っていたことなのを思い出した。「やってみても、良さそうだな。」海賊達は、疑り深げに言った。
 「女の子を海に放り込め。」フックが叫んだ。海賊達はマストに縛り付けられた人影のところに押し寄せた。
 「もう誰も、あんたを助けることのできる者はいないぜ。」ムリンズが嘲るように囁いた。
 「一人いるよ。」その人影が答えた。
 「誰だ、それは?」
 「復讐者、ピーター・パンさ。」恐ろしい返答が戻ってきた。こう言いながら、ピーターは外套を脱ぎ捨てた。そして海賊共は、キャビンでこれまで悪さをしていた者が何物であったか理解した。フックは二度何かを語ろうとしたが、二度共それを口に出すことができなかった。この驚愕の瞬間、彼の心臓が張り裂けてしまったのであろう。
 ようやくフックは叫んだ。「こいつの体を、まっ二つにしてやれ。」しかし確信はなさそうだった。
 「みんな、出て来い。かかれ!」ピーターの声が鳴り響いた。次の瞬間、剣を打ち鳴らす音が船に響き渡った。もしも海賊達が力を一つに合わせていたら、勝利は彼等のものだっただろう。しかしこの攻撃が行われた時、海賊達はまだ統率を取り戻していなかった。彼等はあちらこちらと無駄に駆け回り、自暴自棄に剣を振り回して、自分以外のものは全滅したと思い込んでいた。一対一の戦いならば海賊の方が上であった。しかし彼等は、受け身に回ってしまった。そのお陰で子供達は、2人一組で順に餌食を探すことができた。ならず者達の何人かは、自ら海に飛び込んだ。他の者達は、物陰に姿を隠した。スライトリーが彼等の姿を見つけて、戦うかわりにランプの灯りを海賊達の目に突き付けて走り回った。海賊達は目をくらませてしまい、残りの子供達の血のしたたる剣のなすがままになった。剣を打ち鳴らす音に、全てが呑み込まれてしまっていた。わずかに聞こえたのは、時折響く悲鳴と、落下した死者が水面を叩く音のみであった。そしてスライトリーが、単調な声で犠牲者の数を数え続けていた。「5人目、6人目、7人目、8人目、9人目、10人目、11人目。

 少年達が、直接殺害の手を下している様が、ここにも確かに描かれている。この物語は、冒険に付随する残虐さを描き出すことに、何の躊躇いも見せることはない。

用語メモ
 brisket:牛などの動物の体の胸の部分である。フックの発した言葉のもともとの意味は、「頭から胸のところまで切り裂け」ということになる。激しい残忍な感情を表にあらわした際には、しばしば人間の体を牛馬であるかのように呼ぶことがある。





◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

◇  教室が決まりました。西館の3Fにある第2コンピュータ室で開催の予定です。コンピュータの使い方をご存じの方は、当日お伝えするユーザー名とパスワードを用いてログインし、インターネットに接続することができます。“Daily Lecture”等の公開中のファイルを開いて、講座のテキストとして御覧になれます。ワードを起動して自分でメモ等を作成することもできます。データ保存のためのフロッピー・ディスクあるいはフラッシュメディアをご持参下さい。
 この機会にコンピュータやインターネットを試してみたいという方は、早めにお出で下されば使い方の説明を致します。

◇第1回目が連休の最中という、大変な日程で組まれていることが分かりました。初回欠席でも、受講には差し障りありません。2回目以降好きな時に出席して頂いて結構です。講座は4回連続ですが、毎回の講義内容は、その場の状況に合わせて随時工夫していく予定ですので、出席は単発でも構わないのです。当日の受講受付もできます。
 コンピュータの利用に親しんでいる方は、テキストを購入しなくても教室でインターネットに繋いで、物語の本文を参照することができます。コンピュータに不馴れな方のためには、書物のテキストを用意してあります。講座は2時から開始ですが、1時頃には講師は来ておりますので、質疑応答等行えます。
 あらかじめ、物語のどの部分を読んでみたいか、あるいはこのお話の解釈について疑問を感じる点等を用意しておいて頂ければ、これに対する解説として講義を行って行きます。
 対訳を作成してありますので、翻訳上の疑問点等をご指摘頂ければ、「意訳」の工夫などを話題にすることもできます。

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。
◇18年度開講中の各講座のトピックを開設しました。
 受講生以外の外部の方も御覧になれます。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:ユニバーサル、ユニコーン―『最後のユニコーン』におけるユニコーンの存在論的指標”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/universal.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー(15):レッド・ブル―無知と盲目の影”を新規公開
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/shadow.htm



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