Complete text -- "Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 224"

28 June

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 224


 "What is it?" he cried again.
 She had to tell him.
 "I am old, Peter. I am ever so much more than twenty. I grew up long ago."
 "You promised not to!"
 "I couldn't help it. I am a married woman, Peter."
 "No, you're not."
 "Yes, and the little girl in the bed is my baby."
 "No, she's not."
 But he supposed she was; and he took a step towards the sleeping child with his dagger upraised. Of course he did not strike. He sat down on the floor instead and sobbed; and Wendy did not know how to comfort him, though she could have done it so easily once. She was only a woman now, and she ran out of the room to try to think.
 Peter continued to cry, and soon his sobs woke Jane. She sat up in bed, and was interested at once.
 "Boy," she said, "why are you crying?"

 「どうしたの、これは?」ピーターは、再び叫んだ。
 ウェンディは、話してやるしかなかった。
 「私は年を取ったの、ピーター。20歳よりずっと上なの。随分昔に大人になってしまったのよ。」
 「そんなことしないって、約束したじゃないか。」
 「でも、年を取るしかなかったの。もう結婚もしているのよ。」
 「嘘だ!」
 「本当なの。このベッドに寝ているのは、私の子よ。」
 「そんな筈があるもんか!」
 そうは言いながらも、ピーターもそれには感づいていた。ピーターは短剣を振り上げながら、眠っている子の方に一歩足を進めた。勿論突き立てはしなかった。そうする代わりに、ピーターは床の上に座り込んで、すすり泣いたのだった。ウェンディには、どうしてピーターを慰めてやったらよいか、分からなかった。かつてはいとも容易くできたことだったのに。今はウェンディは、ただの女でしかなかった。ウェンディは心を落ち着けようと、部屋から走り出た。
 ピーターは泣き続けた。そしてまもなくジェーンが目を覚ました。ジェーンはベッドの中で体を起こすと、直ぐにピーターに目を留めた。
 「どうしたの?どうして泣いているの?」

 この物語の冒頭のあたりに展開されていた、ウェンディが最初にピーターと出会った時と同様のシーンが再現されている。おそらくここには、普遍的な回帰的法則性が暗示されているのだろう。人間存在の霊性の根底に染み付いた存在論的位相が、経験的現象の生起という様相のもとに反転的顕現を行っているのである。

用語メモ
 位相変換:エネルギーと質量が同一の何物かの示す異なった二つの位相であるように、運動と力、あるいは現象と属性が位相変換を行う様を思い浮かべれば、ウェンディとジェーンの享受するピーターを軸とした等質の体験が、人間精神の普遍の実質を語るものとして容易く理解され得ることだろう。




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