Complete text -- "Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 225"

29 June

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 225


 Peter rose and bowed to her, and she bowed to him from the bed.
 "Hullo," he said.
 "Hullo," said Jane.
 "My name is Peter Pan," he told her.
 "Yes, I know."
 "I came back for my mother," he explained, "to take her to the Neverland."
 "Yes, I know," Jane said, "I have been waiting for you."
 When Wendy returned diffidently she found Peter sitting on the bed-post crowing gloriously, while Jane in her nighty was flying round the room in solemn ecstasy.
 "She is my mother," Peter explained; and Jane descended and stood by his side, with the look in her face that he liked to see on ladies when they gazed at him.
 "He does so need a mother," Jane said.
 "Yes, I know." Wendy admitted rather forlornly; "no one knows it so well as I."
 "Good-bye," said Peter to Wendy; and he rose in the air, and the shameless Jane rose with him; it was already her easiest way of moving about.
 Wendy rushed to the window.
 "No, no," she cried.
 "It is just for spring cleaning time," Jane said, "he wants me always to do his spring cleaning."
 "If only I could go with you," Wendy sighed.
 "You see you can't fly," said Jane.

 ピーターは起き上がり、ジェーンに向かってお辞儀をした。そしてジェーンも、ベッドの上からお辞儀を返した。
 「今晩は。」ピーターは言った。
 「今晩は。」ジェーンも言った。
 「僕は、ピーターと言うんだ。」ピーターが言った。
 「うん、知ってるよ。」
 「僕は、お母さんを連れに戻って来たんだ。ネバーランドに連れて行くんだ。」
 「うん、知ってるよ。」ジェーンは答えた。「あなたのことを待っていたのよ。」
 ウェンディがおずおずとしながら戻って来ると、ピーターがベッドの支柱の上に腰をかけて、楽しそうに喉を鳴らして笑っているのを見つけた。ジェーンはといえば、寝間着姿のままで有頂天になって、部屋の中を飛び回っているのだ。
 「この子が、僕のお母さんになるんだ。」ピーターは言った。ジェーンも降りて来て、ピーターの横に並んだ。女性達が彼の姿を見つめる時にピーターが一番うれしく思う、あの表情を浮かべている。
 「ピーターには、どうしてもお母さんが必要なの。」ジェーンが言った。
 「そうね、分かっているわ。」ウェンディは、少しばかり悲しそうに認めた。「誰よりも良く、私はそのことを分かっているわ。」
 「さようなら。」ピーターは、ウェンディに言った。そして宙に舞い上がった。ジェーンも、臆面も無く一緒に宙に浮かんだ。もう何の苦もなく空を飛んでいるのだった。
 ウェンディは、窓のところに駆け寄った。
 「駄目、やっぱり駄目よ。」ウェンディは叫んだ。
 「春の大掃除の間だけよ。」ジェーンが言った。「ピーターは、春の大掃除はいつも私に手伝って欲しいんだって。」
 「私にも、一緒に行くことさえできれば。」ウェンディは、溜め息をつきながら言った。
 「駄目よ。お母さんは飛べないでしょ。」ジェーンが言った。

 ウェンディが母親にしたように、ウェンディの娘は母親を裏切り、冷徹に見捨てていく。自分自身によって見放され、断罪されることが、人間一般の宿命となったのである。聡明な老賢人ともなり得なく純真な幼児でもあり得ない、ただハートレスであるばかりの、神の霊性を永遠に脱落させた人間存在としての確証を行う心の中の儀式が、成長と呼ばれるものなのだ。

用語メモ
 相補性(complementality):裏切る行為と裏切られる行為、行為者としての存在と行為を受ける非行為者としての存在が循環のもとに完結したところで、時間性の中の動作が永遠性の中の属性として位相変換を遂げる。非情な喪失神話の完成である。




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