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11 October

公開授業のお知らせ

カリフォルニアから特別ゲストをお招きして、ユング心理学の重要概念である原型と集合的無意識について講義をして頂きます。多くの優れたアニメやゲーム作品において印象的な背景設定として導入されているのが、ユングが唱えた「原型」と「集合的無意識」の概念です。これらは量子力学の発見した新知識と連動して、従来の哲学思想や宗教等の発想を統括的に関連づける重要な基幹概念として機能しています。時として誤解されることも多いユングの思想ですが、学問的な知識としてではなく身近なアニメ等のサブカルチャー現象を通してその本質を語って頂く予定です。これまでよく分からなかったアニメの裏設定が、ジグソーパズルを完成させたように明確な意味で繋がったものとして見えてくることでしょう。

日時:10月31日(月)2時40分より4時10分まで
   終了後5時50分までフリートークの時間を設けてあります。

場所:和洋女子大学西館3階PC教室1

一般の方々の来場方法については後ほどお知らせする予定です。

特別講師:ロサンジェルス ユング研究所教授 ジョン=レイニアード

講義題目:猫耳ユングーアニメで理解する原型と集合的無意識 







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学外の一般の方のご参加も可能となりました。当日大学正門の受付で公開講義参加のご用件を伝えて、入校許可証を頂いて下さい。質問等ありましたらこのスレッドに書き込みをお願いします。





ユング心理学の重要概念とアニメ

原型と集合的無意識と影
 『最後のユニコーン』に登場する蝶々が無自覚のまま古今東西のあらゆる言説と思考を口にします。アニメ版 The Last Unicorn ではこれに加えて影の主題の興味深い映像表現が導入されていました。
 参考 アニメ『最後のユニコーン』の映像表現と影の主題
https://www.academia.edu/7902902/Shadow_Motive_in_The_Last_Unicorn_Metaphysical_Visual_Expression_Adopted_in_an_Animation_Film

 アニメ『コードギアス』では、ルルーシュが概念魔法の一つと思われる絶対命令権を集合的無意識に対して行使するという興味深い場面がありました。



夢と影


映画『ジャンヌ・ダルク』と『風の谷のナウシカ』漫画版では、それぞれに印象的な影との対話シーンがありました。

自分との共生
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/joan/joan.htm

ピーター・パンも実はキャプテン・フックの影です。
「グッド・フォームと内省ーキャプテン・フックの憂鬱」
https://www.academia.edu/7902562/Goodform_and_Reflection_Captain_Hooks_Melancholia

未だ自覚し得ない「自分」の未知の部分が様々の影の姿となって現われます。"self"の全貌を再確認するのがユング心理学です。


錬金術とユング

世界全体に対する霊的な関係修復の試みとしてユングは錬金術を再評価しました。
科学を通して芸術と宗教の再統合を目指した宮沢賢治の発想は、これと重なるものがあります。
量子力学と「詩と科学と芸術」
https://www.academia.edu/8026816/Speculative_Attempt_to_Integrate_Fictional_World_and_Reality



涼宮ハルヒの憂鬱と「渇望」(hunger)

ハルヒがこの世に存在することを強く望んでいたもの達
精神の中の無意識の力と閉鎖空間
https://www.academia.edu/9589197/Anime_Studies_Ghostory_Suzumiya_Haruhi_and_K-on

『最後のユニコーン』の悪役であるハガード王の心の渇望はユニコーンだった。
https://www.academia.edu/7899846/The_Avaricious_Stoist_of_A_Barren_Kingdom


ユング心理学と『最後のユニコーン』研究
ユングが発見した世界と心の間の関係を理解する理論を通して『最後のユニコーン』を論じた優れた論文があります。鍵となるのは「心霊」(psyche)という概念です。
スー・マシソン「ピーター・ビーグルの『最後のユニコーン』における霊的変成と言語の再生ー翻訳および評釈
https://www.academia.edu/7911103/Translation_and_Commentary_on_Sue_Mathesons_Study_on_The_Last_Unicorn_Psychic_Transformation_and_Regeneration_of_Language_in_Peter_S._Beagles_The_Last_Unicorn_


アニマとアニムスとアニメ

アニマ(anima)とアニムス(animus)は、ユングが提唱した心霊的要素を形成する対立概念です。これとは異なり「アニメ」は、日本語でアニメーション(animation)の略として使用が始まった言葉ですが、現在では欧米に逆輸入されて日本製アニメーション作品を総称する英語として定着しています。otaku や hentai と並んで現代のサブカルチャーを特徴付ける重要概念は、日本語起源のものが広く受け入れられているのです。これらの根幹にある本質を見事に語ることができるのが、ユング心理学です。アニメ作品の中には、アニマとアニムスを指摘するのにぴったりの好例を見つけ出すことができます。


神と心霊


ユングは従来の宗教における教義に縛られた制約的な神の概念を超える、柔軟な神概念の再構築を果たしました。神も宗教も、全く新しい見地から人の心のありかたの表れとして再解釈する視点をそこに見いだすことができます。これらを見事に体現しているのが実は数々のアニメ作品です。

フィギュアと呪術と分身



人形は昔からあらゆる文化圏で呪術の道具として用いられてきましたが、自分自身の影の要素を実体化させる手段としてこれを理解し、さらに「心霊」と「原型」という概念をそこに適用すると様々な魔術的機能の本質が分かってきます。
黒田の行ったフィギュア論では、「存在」と「現象」と「人格」という概念について、「原型」という発想に照らし合わせて再検証を行いました。我々の身近にある心を惹く様々なものたちが、なぜそのように生き甲斐と癒しを与えるものとなり得るのかが、ユング心理学を通して明確に理解されるようになります。
https://www.academia.edu/7885016/Figure_Fiction_and_Identity_Ceci_nest_pas_une_figurine


癒しと真言(マントラー=曼荼羅)


世界全体の一覧図でもあり、精神と物質が分離する以前の本質の姿とも解釈することができるのが、「マントラ」と呼ばれるものです。これは身近な存在物データの表記法にあてはめれば、アプリケーション「エクセル」の採用した記述形式である「マトリクス」の姿をとります。次に示すのが存在属性のマトリクス記述の応用例です。
https://www.academia.edu/9763948/Alice_Game_2
https://www.academia.edu/9763982/Alice_Game_2_Model_Answer


ドラゴンと武器


人々の心の中に共通してあらわれる妖怪や怪獣などのイメージは、世界の背後にある潜伏した繋がりを暗示している
英雄の所持する武器は、ただの道具としての機能を超えた分身としての本質的な力を暗示している


英霊とクラスと固有結界
 ゲーム Fate/stay night の背景設定と登場人物達の特質についても、ユング心理学を応用して理解できそうなことがたくさんありそうです。武器ばかりでなく「固有結界」などの能力についても、同様に考察を深めることができるでしょう。人格性の発現する一つの形である「ペルソナ」も、心霊的な統合体として人間存在を拡張して理解する際の重要概念です。

https://www.academia.edu/7884950/Identity_of_Summoned_Heroes_Aspects_of_Psyche_and_Phases_of_Persona_in_Fate_stay_night



「蟲師」と「輪わるピングドラム」

 アニメ「蟲師」に導入されている「蟲」という概念は、ユング心理学を適用して考察するのにぴったりの世界観を反映しています。「輪わるピングドラム」は、色々と気になるところも多いけれど中々全体像を把握することができない不思議なアニメですが、ユング心理学を通して再検証してみると改めて見えてくることもありそうです。
 難解で知られるアニメ「Ergo Proxy」や、実は意外な難解性を秘めているアニメ「Madlax」等も、ユング心理学の示唆する問題性をあてはめてみるとその深い実質が見えてくるものです。

https://www.academia.edu/7892277/Science_Science_Fiction_and_Speculation_God_Man_and_Self_in_Ergo_Proxy_1
https://www.academia.edu/7892210/Science_Science_Fiction_and_Speculation_God_Man_and_Self_in_Ergo_Proxy_2
https://www.academia.edu/7881969/Science_Science_Fiction_and_Speculation_God_Man_and_Self_in_Ergo_Proxy_3

https://www.academia.edu/23192477/The_Annihilation_of_Genre_Axes_in_Madlax_Amorphous_Fiction_of_Dislocated_Perspectives_and_Archetypes_Fictional_Reality_1
https://www.academia.edu/23574076/A_Study_of_Madlax



無意識とアニメの背景情報、あるいは世界の内在的意味

 翻訳作業は言語の保持する内在的意味を再認識する機会を提供してくれます。字面ばかりを直訳してもどうしても反映することができないのが、文章の中のそれぞれの言語が保有している文化と思想と歴史を反映する有機的な意味の繋がりです。異言語間ではこれらの意味の連繋があるいは共通項を持っていたり、あるいは一部において相反する意味連繋のずれを持っていたりします。面倒なことですが、むしろこれらの現象的事実を総合して、世界全体の繋がりと意味という概念の内実を改めて考えることもできます。むしろ本質的に翻訳不可能なものとして言語を認識することをきっかけにして、異質の体系から成る言語を他言語に翻訳することの意義性が改めて認められることにもなります。そのような類似と相違を表現するそれぞれの変化形として種々の言語が存在しており、だからこそそれらの関連を立体的に把握することができる知性の本質的機能を再確認することができるからです。無意識の領域に対する意識の側からの覚醒は、世界にある様々の表象や存在等の中に秘匿された「内在的意味」と「未知の連関」を超出的に捕捉する心霊的進化でもあります。
 以下は特別講師レイニアードさんが示してくれた、アニメの表象の中に示されている「内在的意味」の興味深い指摘の一例です。

https://www.researchgate.net/publication/308587610_Psychological_View_on_Episode_2?_iepl%5BviewId%5D=FInE52qO1aWeX7C4qGawly9N&_iepl%5Bcontexts%5D%5B0%5D=timeline&_iepl%5Bdata%5D%5BactivityData%5D%5BactivityId%5D=308587610&_iepl%5Bdata%5D%5BactivityData%5D%5BactivityType%5D=Publication&_iepl%5Bdata%5D%5BactivityData%5D%5BactivityTimestamp%5D=1474761600&_iepl%5Bdata%5D%5BviewType%5D=self&_iepl%5BinteractionType%5D=publicationClickThrough


猫耳と犬耳
 今回の公開授業の大変魅力的なタイトルは、「猫耳ユング」(cat-eared Jung)でした。猫耳といえば大島弓子の漫画「綿の国星」の影響もあって美少女の髪型の一つとして定着し、メイドさんの姿の定型ともなっているのが日本文化ですが、「犬耳メイド」はなぜか聞いたことがありません。日本では「猫耳メイド」だけど文化の違いで海外のある国では「犬耳メイド」がもてはやされている、という現象でもあれば面白いのですが、残念ながら聞いたことはありません。しかし英語の単語としては、「犬耳」(dog-eared)はちゃんと存在します。しかしこれは手にとって何度も読まれて端の角のところが折れている本のページを指す特有の表現です。人の性格を分類するのによく用いられる「猫的性格」と「犬的性格」の場合のような対応関係は「猫耳」ー「犬耳」の間には成立せず、それぞれが独立して異なった界面での意味を担わされて使用されていることになります。これが言語間の潜伏的関係として時に一致をみたり、あるいは概念軸をずらした界面で対応語が使用されていることを確かめることができるという一例です。特別講座のタイトルの「猫耳」が、いかなる意味階層を適用して用いられているかは、実際に講義の内容を確かめた結果判断されることになります。


ネバーランド
 『ピーターとウェンディ』(Peter and Wendy)の中に描かれているネバーランドは、ユングの提唱した集合的無意識と原型世界の特質を見事に体現するものです。ある意味でユングの発想のモデルを提供するものであるとさえ言える要素が、子供達の心の奥底に共通して見出されると語られている精神世界ネバーランドの中に秘められています。詳しくは以下の参考資料をご覧下さい。
https://www.academia.edu/7902781/Lost_Religion_Neverland_and_Make-believe
23:01:24 | antifantasy2 | | TrackBacks
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