Complete text -- "Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 135"

31 March

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 135


 "Silence," cried Wendy when for the twentieth time she had told them that they were not all to speak at once. "Is your mug empty, Slightly darling?"
 "Not quite empty, mummy," Slightly said, after looking into an imaginary mug.
 "He hasn't even begun to drink his milk," Nibs interposed.
 This was telling, and Slightly seized his chance.
 "I complain of Nibs," he cried promptly.
 John, however, had held up his hand first.
 "Well, John?"
 "May I sit in Peter's chair, as he is not here?"
" Sit in father's chair, John!" Wendy was scandalised. "Certainly not."
 "He is not really our father," John answered. "He didn't even know how a father does till I showed him."
T his was grumbling. "We complain of John," cried the twins.
 Tootles held up his hand. He was so much the humblest of them, indeed he was the only humble one, that Wendy was specially gentle with him.
 "I don't suppose," Tootles said diffidently, "that I could be father.
 "No, Tootles."
 Once Tootles began, which was not very often, he had a silly way of going on.
"As I can't be father," he said heavily, "I don't suppose, Michael, you would let me be baby?"
"No, I won't," Michael rapped out. He was already in his basket.
 "As I can't be baby," Tootles said, getting heavier and heavier and heavier, "do you think I could be a twin?"
 "No, indeed," replied the twins; "it's awfully difficult to be a twin."
 "As I can't be anything important," said Tootles, "would any of you like to see me do a trick?"
 "No," they all replied.
 Then at last he stopped. "I hadn't really any hope," he said.

「お喋りをやめなさい。」みんなが一度に話し始めるのは止めるようにと、もう20回も言った後でまた、ウェンディは声をあげました。「もう全部飲んだの、スライトリー?」
「まだ全部飲んでない。」スライトリーは、メイク・ビリーブのカップをのぞき込んだ後で言いました。
「スライトリーは、まだミルクを飲み始めてもいないよ。」ニブズが横から口を出しました。
これは告げ口でした。スライトリーは、言いつけるいい種を見つけました。
「ニブズはね、」スライトリーはすぐさま叫びました。
けれども、ジョンが先に手を上げていました。
「なあに、ジョン。」
「ピーターの席に座ってもいいかな。今はいないし。」
「お父さんの席に座るですって、ジョン!」ウェンディはあきれて叫びました。「勿論いけませんとも。」
「ピーターは、本当は僕等のお父さんじゃないんだよ。」ジョンは答えました。「僕が教えてやるまで、本当のお父さんがどんなふうに振る舞うか、ピーターは知りもしなかった。」
これは愚痴でした。「ジョンはね、」すかさず双子が言いつけました。
トゥートゥルズが手をあげました。トゥートゥルズはみんなの中で一番遠慮深い子で、実際子供達の中で唯一遠慮をする子で、ですからウェンディはこの子にはことのほか優しかったのです。
「多分僕は、」おずおずとトゥートゥルズが言い始めました。「お父さんにはなれないよね。」
「だめですとも、トゥートゥルズ。」
いったんトゥートゥルズが話し始めると、それが稀な分だけ一層、不器用に話し続けてしまうのでした。
「僕は、お父さんにはなれないから、」のそのそと続けました。「マイケル、僕に赤ちゃんをやらせてくはれないよね。」
「駄目だね。」マイケルはぴしりと言いました。マイケルは、もう籠の中に入っていました。
「僕は、赤ちゃんにはなれないから、」トゥートゥルズは、また言いました。さらにもっとのっそりとした感じになってきました。「僕は、双子になれるかな?」
「無理だね。」双子が答えました。「双子ってのは、とても難しいんだ。」
「僕は、難しいものには何もなれないから、」トゥートゥルズは続けました。「僕が手品をするのを見たい人は、いるかな。」
「見たくない。」全員が答えました。
これでようやく、トゥートゥルズも諦めました。「そうだと思ってたんだ。」

全てがメイク・ビリーブなのであれば、家族としての生活をする上での役割を演ずることばかりでなく、特定の人格を受け持つこととそれらを交換することも可能になるのであろう。トゥートゥルズの場合はあまりに無能なので、他の人格を一切演ずることが出来ないという、独自の人格を強固に保持していることになる。興味深いメタ論理である。
様々な点で、子供達の首領であるピーターとトゥートゥルズが、正反対の性格と能力を分け持っていることも興味深い。それぞれの局面・系の中で形質の分極が行われ、影としての存在が新たに生ずるのである。

用語メモ
humble:“つつましい”、“卑しい”
diffident:“おずおずとした”、“ためらいがちな”
 共にピーターの性向と対照的な傾向をあらわす形容詞である。


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